Diary亭日乗

菅谷昭講演会「原発事故にともなう健康被害の長期的課題」

山田衣純
菅谷昭講演会「原発事故にともなう健康被害の長期的課題」
県南に住む友人から、講演会の案内をもらった。
彼女は、「みんなの放射線測定室てとてと」という市民測定室のメンバーの一人。
震災後、県南の農家の人たちが、
自分たちのつくった野菜を
安心して食べてもらうために立ち上げたこの測定室は、
野菜をつくる農家の人たちと、野菜を買うお客さんたちの、
交流の場になっているとも聞いている。
お互い忙しくて、あんまり会えないけれど、
講演会に行けば、久しぶりに彼女の笑顔を見られそう。

震災直後は、本当に毎日不安で、ネットばかり見ていた。
食べ物や水はどのぐらい汚染されているのだろう。
土は?空気は?子どもに外遊びさせてだいじょうぶなの?

でも、ネットの情報はデマも多いし、
マイナス思考になりがちだと気が付いて、
市民団体が開く放射線や原発の講演会に行くようになった。
同じような不安を抱えている人たちと、
思いを共有していると、少しずつ重しがとれていく。
人と話すことが、こんなに大事なことだったなんて。
あの頃、たくさんの人たちに助けてもらったと思う。
でもその内、日々の暮らしを守ることに手一杯になって、足が遠のいてしまった。

岩沼市民会館は、両隣を仮設住宅に挟まれて建っていた。
駐車場がいっぱいで、ホールもほぼ満席。
後ろの方は親子席になっている。
息子と同じ幼稚園のお母さんの姿もちらほら。
やっぱり、みんな気になってるよね。

お医者さんでもあり、松本市長でもある菅谷さんは、
1996年から2001年まで、チェルノブイリ事故で汚染されたベラルーシ共和国で、
甲状腺検査や手術などの医療支援活動をおこなっていた。
その経験から、福島原発事故で汚染された地域に暮らす子ども達の、
移住や保養を訴えている。
実際に松本市には、「まつもとこども留学」というNPO法人があり、
福島の子ども達を受け入れているらしい。
福島では草花に触ったことのない子ども達が、花をつむ楽しみを覚え、
畑仕事や川遊びに出かけ、日常を取り戻していく。
菅谷さんは、この取り組みを全国に広めたいと願っている。

物腰は柔らかだけど、震災と原発事故を風化させている日本人のことを、
「悪性反復健忘症。しかも難治性。」と辛辣なユーモアを交えて語り、
一人の人間として、使命感を燃やしながら生きている方なのだと、
尊敬せずにはいられない。

会場を出ると、受付にカンパ箱を持って、彼女が立っていた。
久しぶりだね。元気?
今、介護の仕事で大忙しよー。ちょっとカンパしていってよ。
大変なことも、からからと笑い飛ばす彼女には、いつも元気をもらう。
やっぱり来て良かった。

またお茶しようよ、と言うと、とびきりの笑顔が返ってきた。