Diary亭日乗

新寺こみち市

山田衣純
新寺こみち市
「こみち弁当売り切れ。グラノーラ完売。」

新寺こみち市で人気のお店「豆キッチン」のブースの前には、
ぺらっと張り紙がしてあった。

ああ。
やっぱりもっと早く家を出ていれば良かったのに。
息子の遊びに付き合っていたら、こんな時間に。
でも、市が始まるのは10時から。
今、10時半。
30分で売り切れなんて、
一体、どんな争奪戦が繰り広げられていたのか。

さらに、黒板に書かれたメニューを見て、がっかり感倍増。
大根と金柑のピクルスや、玄米バーグ。
クルミとハトムギとブルーベリーのグラノーラ。
どれもこれも食べたとのないものばかり。
きっと、きっと、ものすごく美味しかったにちがいない。

毎月28日に開かれる新寺こみち市。
新寺2丁目蓮池公園から始まる緑道に、
パンや焼き菓子、農家の野菜に漬物、手作り雑貨など、
こだわりのあるお店が軒をつらねる。

Diaryをチェックしていたら、ちょうど土曜日だし、
噂のこみち弁当を買って、公園で食べるのもいいかも。
そんなことを考えながら、息子と仙山線に乗った。

蓮池公園は、仙台駅東口から歩いて10分ほど。
途中で満開のミモザを見かけて、
もうすっかり春が来たのだと、うきうきしながら公園に着いたら、
完売の張り紙。
しばらく立ち直れなかった・・・。

息子はそんなことを気にする様子もなく、
公園で知り合った女の子とすっかり仲良くなった様子で、
私も気を取り直して、ぶらぶらしてみることにした。

やっぱり、土曜日とこの陽気のせいか、
人出も多く、どこのブースも賑わっていた。
お薬師さんの手づくり市で見かけたブースもちらほら。

おや、あそこにいるのは、
お薬師さんでは売り切れだった天然酵母パンのゆがふさん。
まだパンが残っている!
人混みをすり抜けながら、思わず早歩きになった。
国産小麦と天然酵母にこだわり、
しみじみ美味しいゆがふさんのパンは、
私も息子も大好きだ。

黒糖ロールとココナッツクッキーを買って、
ほくほくしながら先に進むと、
向こうから見覚えのある人がやって来た。

どこかで会ったような気がするけれど、
名前を思い出せない。
あちらも同じことを考えているらしく、
じーっとこちらを見ている。
息子と同じ年頃の、男の子と女の子を連れている。

おそるおそる挨拶をして、
「どこかでお会いしてるような気がして。」と、
切り出してみると、「私もそう思って。」というお返事。

子ども達が一緒に遊び始めたので、
そのまま立ち話をしていると、
どうやら家が近いということが分かって、一安心。
お互い、通りすがりになんとなく気になって、
顔を覚えていたらしい。

こんな出会い方もあるのだな、とちょっと驚き、
ぜひ今度ご一緒しましょう、と約束して別れた。

4月のこみち市、楽しみが一つ増えた。
次は10時に来よう。