Diary亭日乗
ケータイで撮った「3.11」はありませんか?
岩松伸幸
ケータイで撮った「3.11」はありませんか?
昼過ぎに人と会う為に街に出た。
待ち合わせの場所で待っていると、スタッフジャンパーを着た女子大生風2人に声をかけられた。
付箋を渡され震災に関してなんでもいいので言葉を書いて下さいと頼まれた。
書きたい事も特になく、誰に向けられたメッセージなのか掴めないのだけれど、
懸命に声をかけた努力に応えるために言葉をひねり出した。
震災は体験していないのでもっとよく知りたいです。みたいなことを書いた。
毎年3月11日が近づくにつれ、身の置きどころのなさを感じる。
僕は震災当時京都住まいだったので、震災は遠くの出来事であり対岸の火事だった。
青葉区の実家も被害を受けたけど、命に関わる被害も無かったので当事者としての感覚は無い。
なので、他所の家のお葬式を通りすがりに見ている感じに近い。
そんな自分の感覚になんとなく申し訳無さを感じもする。
小1時間ほど話をして予定終了。
少し時間があるのでDiary記載のイベントを見にメディアテークへ。
7階での催し、ケータイで撮った「3.11」はありませんか?に行ってみた。
「ありませんか?」と言われると「ありません」なのだけど、興味があったので行ってみた。
会場はメディアテークの作業室で、ガラス戸から覗くと若い男性と女性。
パソコンを傍らに佇んでいた。お客さんは居なさそうだ。
ちょっとお話聞いてもいいですか?と訪ねてOKを頂く。
お礼を言って、自販機で3本飲み物を買い、2人に勧める。
聞くと1日お客さんがあまり来なかったそうで、のんびりした雰囲気。
以前の開催では場所が良く、通りすがりのお客さんが気づいて来てくれたらしい。
今回は奥まった作業部屋の為、気付いてもらえなかった模様。
ふたりはお客さんが撮影した写真を提供してもらい、
写真に関するエピソードを聞き、共に記録として残す作業をしているとのこと。
後は他愛もない茶飲み話をして、その場を後にする。
部屋を出るとレコーディングインプログレスと題した展示が行われていた。
友人が設えを整えたと耳にしていた。
どれだけの手間が掛かっているのか、想像しながら展示を見る。
興味深かったのは「はじまりのごはん」というコーナー。
震災当時のご飯に関する写真を展示してあり、その写真を見て想起された記憶を付箋に書いて貼れるようになっている。
誰かの写真をきっかけに他の誰かの眠っていた記憶が呼び出され、それがコミュニケーションを誘発していることが面白かった。
納豆の写真に「I love natto !」とかゆるいコメントがあるのも可愛い。
アーカイブの意味を自分に問うてみても明確な結論は思い浮かばないのだけど、
こういう使い方もあるんだなぁとイメージが広がったので良かった。