Diary亭日乗

伝える学校の発表会

山田衣純
伝える学校の発表会
広瀬通にある市民活動サポートセンターは、
表通りの喧騒とは全くの無縁で、いつも静かな空気が流れている。

今日は「伝える学校の発表会」の初日。
震災をきっかけに始まった、
市民団体と仙台市の協働プロジェクトで、
震災の記憶を様々な形で伝えている。

友人が、その中の一つ、
「街からの伝言板」という市民参加型のプログラムに関わっていたので、
もともと興味はあった。
今回、Diaryにも掲載されて、
他のプログラムの取り組みもまとめて見られるというので、
来てみたのだ。
 
正直なところ、震災関連のイベントには、
これまで足を運ぶ気になれなかった。
家族や仕事やふるさとを失って、
絶望の淵に立たされている人にとって、
そんなイベントは、どんな意味があるのだろう。
ただ、その人の暗闇に、
寄り添うだけではいけないんだろうか。
いつもそう思っていた。

しかし、今年の正月、
関西からやって来た親戚を空港に迎えに行って、
長町周辺の仮設住宅を通った時、
「うそっ!仮設ってまだあるの?!」と、
助手席で驚きの声が上がったのだ。

そっか。知らないんだな。
そっか。伝えていかないと、忘れられてしまうんだな。
彼女の驚きは、
そんな当たり前のことを、私に気づかせてくれた。

「伝える学校の発表会」では、
このままでは忘れ去られてしまうに違いない震災の記憶が、
丁寧に拾い集められていた。
避難所で起きた出来事、
今は誰も住めない地域の郷土料理、
仮設住宅での取り組み、スーパーの行列、停電の中での出産…。

市民が撮影した写真や、
聞き取り調査で浮かび上がる、
今、生きている人たちの思いは、
喪われた人たちの記憶とつながっている。

仮設住宅でひたすらおしるこを振る舞う
「おしるこカフェ」の写真が、ちょっとユーモラスで、
思わず見入っていると、受付の人が話しかけてきた。
「震災後の体験を集めて、地図に書き込んでいます。
よろしければ、こちらのシートに記入していただけませんか。」
鉛筆を握って、紙に向かうと、色んな気持ちがあふれてくる。

明日は3月11日。
震災から4年目を迎える。
記憶はどうしても薄れていく。
忘れないために伝えること。
これからますます大切になっていくだろう。
明日は、一人で静かに黙祷したいと思う。