Diary亭日乗
かたりつぎ 朗読と音楽の夕べ
沼田佐和子
かたりつぎ 朗読と音楽の夕べ
もともと入っていた用事がキャンセルになって、急に時間が空いた。
子どももおじいちゃんのうちに行く手はずになっているし、
せっかくの自由時間、どこかに行ってみようかなとDiaryを眺めていたら、
うってつけのイベントを発見した。
ネットで調べてみると、
竹下景子さんの朗読で、被災者のメッセージを聞ける催しらしい。
バイオリンやピアノの演奏があったり、被災地を描いた絵が見られたり、
盛りだくさんな感じ。
地震の話は少し気が滅入るな、と思いつつも、
竹下景子さんのネームバリューに魅かれ、思い切って申し込んでみた。
宮崎駿の「風立ちぬ」、お母さん役で出てたよね。
ちょっとだけ良心が痛み、
いちおう「一緒に地震のお話、聞きに行く?」と子どもに聞いてみたら
「じしんとつなみはすきじゃない」とお断り。ちょっと、ホッ。
と、そんなこんなで見てきた「かたりつぎ ~朗読と音楽の夕べ~」、
ひとことでいうと「竹下景子さんすごい!」。
まず、朗読が本当に素晴らしい。
印象的だったのは、災害対策本部で指示を出していた責任者の手記の朗読。
責任者の方の苦悩や後悔がバシバシ伝わってきて、
ちょっと胸が痛かったし、自分だったらこんなふうにできたかな、と苦しくなった。
『職員の中には、家族や親戚を亡くした者がたくさんいた。私は業務に忙殺され、その職員たちに何の言葉もかけてあげることができなかった。そのことを、今でも後悔している』
という言葉、
竹下さんの声で反芻すると、書いている今でも涙が出そうになる。
たぶん私は、新聞にこの手記が載っていても、さほど感動しなかったと思う。
またこれね、聞いたことあるわ、って。
それが、竹下さんの朗読で聞いたら、けっこう本気で心が動いた。
これが“語る”ことの力なんだと思う。
「かたりつぎ ~朗読と音楽の夕べ~」は、
神戸の阪神大震災をきっかけに始まったイベントとのこと。
震災の記憶や想いを後世の人に伝えることが目的だそうだ。
被災の記憶を誰かに伝えるのって、ほんと難しい。
ともすれば、自分勝手な「被災自慢」になってしまう。
でも、地震の記憶や経験って、
きっとみんなに伝えていかなければいけないことなんだろう。
その手段として朗読を選んだのって、尊敬する。
人の声で聴くことの凄さを体感することができた。
舞台の奥一面に飾られていた油絵も迫力満点。
講演のあと、すぐそばで見られたんだけど、自分が被災地に立っているかのようだった。
震災関係のイベント、これまであまり積極的に行きたくなかったんだけど、
今度からもうちょっと行ってみようかな。
あの地震に対するいろんな人の想いを、もっと知ってみたいな、と思えた。