仙台市内の書店について調べていると、必ずその名前を聞く「八重洲書房」。実際に、「八重洲書房」に通っていた方たちから話を聞くと、皆一様に「あの店はすごかった」「あそこで初めて知った本がたくさんあった」と当時の様子を生き生きと話してくれます。 しかし、インターネットで検索しても、どのような棚作りで、どのような内装で、どのような間取りだったかわからない。1970年に開業し、1993年に閉店するまで、八重洲書房とは、仙台の文化にとってどんな存在だったのかを調べてみます。

はたして、八重洲書房の棚はどのような姿で、どのような本が並んでいたのだろうか。ここでは、1987年から1993年、ダックシティ丸光地下2階で営業していた時代を知る人物の証言や資料によって姿が見えてきた店内レイアウトと、そこに並べられていた主な作家を紹介する。1.〈幻想文学―日本〉稲垣足穂内田百閒小栗虫太郎中井英夫久生十蘭夢野久作2.〈批評―日本〉内村剛介江藤淳小林秀雄谷川雁花田清輝埴谷雄高中...

八重洲書房の店主であった谷口和雄氏によって、1983年に書かれたテキストを転載する。バーコードによるPOS管理も、手書きPOPの横行も、ネット書店の定着も、まだ先の話だったころ。しかし、ここで語られている“棚”の在り方や問題意識は、書店において普遍的/不変的なものではないか。発表媒体は、人文書出版社によって構成される団体・人文会の機関誌『人文会ニュース』。(高橋)新しい『知』のもとめに仙台 ...

高橋創一
<はじまりに代えて―八重洲書房に関する覚書> 私が最初に八重洲書房という名前を聞いたのは、2008年頃のこと。年配の方と書店についての話をしていた際、かつて仙台駅前で営業していたその店の凄さを熱く語られたように記憶している。その後も、書籍/書店についての話をする際に八重洲の名は度々出てきた(注1)。曰く、「本の並べ方、棚のつくりかたが凄い」「仙台では八重洲でしか手に入らない本が多...